べこラビ対談Vol.1 Page.2

やらなきゃいけない人がやる!

写真提供:一般社団法人アカデミーキャンプ
写真提供:一般社団法人アカデミーキャンプ

ぽち
 ロクディムでの役割分担って、同じ役目をずっとし続けるんじゃなく、話をつくりにいく人と〈ぶっこわし役〉がいるんだ......。


カタヨセ
 そうですね。僕は「やらなきゃいけないときの人はやろうね」って言ってます。いま、やらなきゃダメじゃんってときが出てくるんですよ。いまは、俺が主役というときが。

 役割というよりかはそのタイミングで、「あんたやらなきゃいけないよね」っていうときが必ず来るので、そのときに逃げちゃダメだよって。

 逃げたらすぐわかるんです、逃げた本人が。

 即興って、言ったこととやったことが現実に起こっていく世界なので、逃げでやったことってすぐ物語を壊したり、他者に伝わらなかったり、すぐあらわになるんですよ。

 結果がすぐに出ちゃう。


ー 逃げた瞬間に失敗するよって?

カタヨセ
 逃げた瞬間に物語が止まるし、みんなも関われなくなっちゃう。

 あとは見ている人がほんとに残念になるんです。「その物語、ほんとうにつくりたかった?」って振り返っても悲しくなる。


ー ちゃんと、失敗をしないといけない。

カタヨセ
 そうなんです。失敗をしきったからこそ、強いんです。

 ちょっと話がずれますが、即興のお芝居を初めてやる子たちって、最初どぎまぎするんですけど、笑いや笑顔によって、自分の中をバーンと広げて見せてくれるんですよね。

 そうなるには、「自分って思っている以上にすごいし、面白いんだ」ってことを自覚してほしくて。だから、あなたが主役だし、あなたがやらなきゃいけないときにやってねって言うんだよって。


ぽち
 最近は「誰もがリーダーに!」みたいな話が多い中で、「いまは、あなたがやらなくちゃいけない人!」と、リーダーが次々に交代する形は、すごく面白いですね。

 場面が変わったら、「あんたが大将」にならなきゃいけないタイミングがある。それがどんどん変動していく。

 そうなると「いや、あの人がリーダーなんで......」って言い訳ができなくなる。


ー みんながそういう役目になりうるんですね。リーダーに限らず。

ぽち
 この話ってサッカーチームに当てはまりません?

 「点取り屋なんだから、全部FWがゴールを決めなさい!」となると、すげーいいボールが来てるのに、「いやオレはMF。シュート打つ役割じゃないから......」とパスを出したりすると、もうスタジアム中が、大ブーイング。

 実際にヨーロッパの強豪チームは、誰もがあるときには主役になるし、スーパースターのメッシがゴールのお膳立てをすることだってある。

 何百試合あっても、同じ場面・同じプレイは二度と生まれないわけだから、即興に似てるなと。

 ロクディムも「あのシーンよかったから、もう一回やって!」ってリクエストされても、できませんよね。


カタヨセ
 できないです。やったら、めっちゃヘタクソです......(笑)。


個になったうえで、集団と関わる

写真提供:涌井直志
写真提供:涌井直志

ー 型やこだわり、境界線のようなものをとりはらうためにやっていることはありますか?

カタヨセ
 大分県日田市の中学校で年に3、4回人権教育の特別授業をしているんです。「多様性を認め合う」というテーマで即興をやってます。

 体育館に20人ぐらい集まった生徒に、まずは空間を自由に歩いてくださいって言ったんです。

 そうすると、くっついて歩くんですよ、やっぱり中学生なんで。

 そこで一回その動きを止めて、生徒たちに「人生で一番長く付き合う人は誰でしょう?」って即興的に質問したんです。

 するとイケメンの中学生からは「彼女」とか「家族かなあ?」という答えが返ってきて。

 僕は、「多分、自分です」と。

 「あなたの彼女も家族も、すごく大切な人だけど、おそらく一番長く付き合うのは自分です。だから次は、自分ひとりで歩いてください。お友だちはいるけど、くっつかないで歩きましょう」って。

 すると、少し顔が変わるんですよ。

 「そうだよね。俺だよね」って。

 次は離れながらも、アイコンタクトを他の人ととって、自分だけじゃなくて、他者もいることを体験してもらいます。

 で、「今度は目が合ったら、一緒にしゃがんで目を合わせたまま床を触ってから立ち上がって、そこまでしてからアイコンタクトを外してね」と言います。「このときはしゃべらないでね」って。

 でも恥ずかしいじゃないですか。恥ずかしいけど、ちょっと面白いってことで笑いが生まれる。

 目を合わせてしゃがむという、一緒のこともやることもできるし、あえてそれをしないっていう選択もできる。

 選択をするっていうことも大事だよという話をします。

 そこで集団から個に戻って、個になったうえで集団として関わるという土台ができるんです。


ー 個になったうえで、即興ができる?

カタヨセ
 世界にたくさんの人がいるように、僕の考えと相手の考えが一致したらラッキーで、一致していないこともありますよね。それが「想定の殻をやぶること」だったり「事件」だったりするわけですが、そのときにどうするかが即興だと思っています。事件の起こらない即興はつまらないですよね。

 即興って、相手の言っていることを受け入れつつ、自分はこうだよっていうのを積み重ねていく作業だと思っています。

 100%相手を全部受容して自分をなくすわけでもないし、我を押し通すわけでもない。

 いろんな割合はあるけど、受け入れて、積み重ねていくことが、自分と他者を開いていくことにつながるんじゃないかな。


総監督ぽちの編集後記

 「チームワークを大切にする」ことが、「自分を犠牲にする」「個性を抑える」ことだと思っていませんでしたか?

 仲間の個性や考えを大切にして、同じように自分のことを仲間に認めてもらう。

 その過程で意見がぶつかったり、ケンカになることがあっても、それも必要な〈痛み〉なのかもしれませんね。

 自分の強い個性と、仲間を受け入れる広い心を兼ね備えたメンバーが集ったら、どんなピンチでも即興で乗り越えられる強いチームになれることを、カタヨセさんに教えてもらえた気がします。


カタヨセさんをもっと知りたい! な一冊

『プラネテス』(幸村 誠 著 講談社 2001年)

 欲望と野望にまみれ、宇宙飛行士を目指す主人公が、あるきっかけで変わっていくというストーリー。宇宙や星が好きだというカタヨセさん。宇宙が大きいから自分が小さいことを知れる。そんな作者が挑んだ「ちっぽけな自分とは?」というテーマに、共感したそう。

 小さいからこそ感じられる大きなもの、という相対的に物事をとらえるカタヨセさんならではの選書だ。

 ちなみに、中学時代にバスケをやっていたカタヨセさんの第2候補は『スラムダンク』。

 好感度がますますアップするセレクトでした。