べこラビ対談Vol.1 Page.1

即興演劇って、
トレーニングするんですか?

 今や全国を飛び回る即興パフォーマンス集団『ロクディム』。

 福島県いわき市出身でもあり、共同主宰を務めるカタヨセヒロシさんにご登場いただき、総監督・緒方(ぽち)がおさえきれない"ロクディム愛"をぶつけるという奇特なインタビューが実現しました!

 即興という世界で、見えるものとは? これを読めば、きっと心が広くなる!

interview by Daisuke Ogata & Azusa Yamamoto

自分をとび超え、想定の殻をやぶる

写真提供:ロクディム
写真提供:ロクディム

ー 台本やセリフが決まっている芝居の稽古は想像できるんですが、即興で芝居をつくるロクディムも稽古をするんですか?

カタヨセ
 稽古、しますよ。

 たとえば、部屋の端と端に向き合うかたちでロクディムのメンバー二人が立ちます。そこから二人が交差するように歩いて行って、すれ違うときにどういう感情になるかを見るんです。

 一方が身の危険を感じて逃げる、もう一方はそのことに対して傷つくのか、追いかけるのかとか。動物的感情や、衝動のドアを開く感覚にするというか。

 マニアックでしょ(笑)。

 ただ、僕たちも一応大人なんで、こういうときに自然と大人として行動するんですよ。嫌をおさえちゃう。

 でもあえて、嫌なときには「嫌だよ!」って開放する。自分がどういう気持ちなのか、それが他者にどういう影響を及ぼすのか、自と他の意識をもっておくことが大事なんです。

 たとえば、二人が「こんにちは」ってただすれ違うのは、お互いの想定の中じゃないですか。でも僕らがやりたいのは「想定の殻」をやぶること。二人がまざったときに起こる何かが、即興の面白さだと思うんです。そこで初めて、自分をとび超えて相手との共有の世界をつくれるというか。そういう「許容の世界」を共有するために稽古してますね。


ー ロクディム、いきなりすごい!(笑) 自分をとび超えるって、想定や守りの世界からも?

カタヨセ
 そうですね。失敗を恐れずに行動するとか、勇気をふるってアクションを起こすことだと思います。

 自分にロックしちゃったり、心の扉を閉じてしまうと、そこから出たくなくなるんです。出たら想定から外れるし、下手したら傷つくことになる。

 愛の告白するのが怖いっていう状態に近いですね。

 でも想定の殻を取ったときに、「それでもいいじゃん」って言える関係性やチームワークにすごく価値を感じます。そこから生まれるものを、僕たちは即興を通じて提供したいなと思っています。


自分のやったことが直接世界をクリエイトする

写真提供:一般社団法人アカデミーキャンプ
写真提供:一般社団法人アカデミーキャンプ

ー ほかによくするお稽古は?

カタヨセ
 子どもたちとのワークョップでもやるんですが、「ワンワード」というのがあります。3人一組、つまり3人で〈一人の人間〉になって、一文節ずつしゃべっていくものです。

 たとえば、「森の」→「中に」→「入った」→「歩いて」→「ぬけた」という風に、一人ずつ言葉をまわしていくんですけど、結局森に入れないことすらあって(笑)。

 「森に」「行こうと」......、この後にどういう言葉が続くでしょう?


ー ......「思います」?

カタヨセ
 でも「思います」だと行けないんですよね。現状は動いてないんですよ。気持ちの話になるので。

 即興において、自分が出す言葉ってけっこう重要で、自分のやったことがすぐに世界をクリエイトするんです。

 それは、自分があらわになること。自分を表現することであるから、楽しかったり、気持ちのいいことでもある反面、怖い面もあるんです。

 その両面とその人を見て、どうバランスをとり、どういう言葉をかけるのかは、ワークショップや稽古をリードする側として、すごく集中して決めなくちゃいけない部分です。


ぽち
 「ワンワード」に参加する子どもたちを見ていると、みんな頭をフル回転させてるのが分かるんですよ。

 たとえば、森に入ろうとしてるのにそこで花火打ち上げちゃったりして、ストーリーとは関係ない言葉を出したら、話が進まないし、スベるのはみんなわかってる。だから、「俺これ言ってやろう」ってあらかじめ用意したものは使えないし、即興で言葉を生まなきゃいけない。


ー そりゃあ、みんなすべりたくないもんね(笑)。

ぽち
 そして「ワンワード」をまわしてるときに、ロクディムのメンバーが一人グループに入ってくると、いい感じに話がぶっこわれる(笑)。

 「くまが」→「襲いかかった」と話がある程度想定通りに進みそうになったところに、「ところが!」なんて急展開が起こって、みんな「ええー!?」ってなる(笑)。

 そうすると、何人かの子どもは、「オレもあれやりたい」ってなるのね。〈ぶっこわし役〉になりたいと。

 「どうやって、ぶっこわしてやろうか......」とイタズラを考えているときの〈わっるい顔〉が、たまらなくいいんだよね(笑)。

 その様子を見て、冷静なまとめ役の子たちは「あぁ爆弾がまた増えるな」って身がまえるわけ(笑)。

 いい意味での腹の探り合いがはじまって、お互いのキャラがフル回転しだすんです。


カタヨセ
 タイミングもありますよね。バランスをとろうと思っている子が爆弾的なことを言っちゃって、〈ぶっこわし役〉やりたい子がバランスをとろうとするとか。


ー そういう逆転もあるんですね!ロクディムの〈ぶっこわし役〉が一人だけじゃないように!(笑)

カタヨセ
 そうですそうです(笑)

カタヨセヒロシさん

 福島県いわき市出身。パフォーマンス集団『ロクディム』の共同主宰を務める。「この瞬間を一緒に笑おう。」をキーワードに、観客と一緒に「今、ここ」を「つくり」「たのしみ」「共感・体験・大笑い」する即興芝居×即興コメディパフォーマンスを中心に活動中。劇場のみならずカフェ、神社、学校など「いつもの場所をあっという間に『笑い溢れるコメディ空間』へ」変えながら、日本各地を巡り公演を行なっている。

 ほかにも、俳優・ダンサー・企画/構成/演出・デザイン・写真・映像・環境音・盆踊りなど、多方面でマルチに活躍中。

 https://6dim.com